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カトクミメモ katokumi.exblog.jp

ケンチク&音楽修行中!


by kumi-is-happy

すべてが腑に落ちた

ユイがT先生にお世話になっていた頃、私はよく先生に「ユイは私と音楽の捉え方が違うんです」と言っていました。私が楽譜を読み、音を聴き、自分のなかに音楽を感じる過程とユイのそれがどうも違っている。ユイの普段の行動から、何となく「理系脳なんだなー」と思っていました。(私は完全に文系)

ユイがヴァイオリンを始めたのは3歳、近所の女性の先生に習っていました。ユイはすぐにヴァイオリンも先生も好きになり、2年間、1度も休まずレッスンに通いました。ユイが先生のお宅へ入ると、まずヴァイオリンケースの置き場を決め、自分の決めた手順通りにヴァイオリンを準備し、立ち位置を決め、立つ。この過程にものすごく時間がかかり、ちょっとでも違うこと(立ち位置が変わる、時間がないので手順をはしょる等)があると、床にひっくり返って怒りました。色鉛筆を使って音符を書いたり色を塗ったりすることも大好きでしたが、色鉛筆を取り出す順番、並べる順番が少しでも違うと最初からやり直します。先生はとても丁寧に教えてくださっていましたが、だんだんユイの行動にイラッとされることが多くなり、私の方からやめざるを得ませんでした。

次の先生はアメリカから帰国されたばかりの若い男性。とっても明るく楽しいレッスンにユイは大喜びでした。新しい先生に変わってまずわかったことは、ユイが楽譜を全然読めてなかったこと。普通、一段一段、左から右へと読んでいく楽譜ですが、ユイはオケのスコアを読むときみたいに上から下までをいっぺんに左→右へと読んだり、楽譜の段数や小節数に異常にこだわり、「この曲は前の曲より何段多い」とかよく言っていました。そんなユイに先生は「おんぷカード」を使って、ゲーム感覚で読譜を教えてくださいました。

T先生に変わってからはレッスンの内容がとても難しくなり、楽譜を読み込み音楽にする過程を教わり、さまざまな表現とその練習方法を指導してくださいました。この頃のユイはチューニングにものすごくこだわり、ちょっとでも音が違うと先生に楽器を渡すので、その度にレッスンが中断します。そして先生が「もう少し○○なイメージで弾いてみて」と言っても、さっき弾いたのと全く同じことを繰り返します。我慢強いT先生は穏やかに同じことを何度も言ってくださいましたが、何度やっても同じ。レッスンが終わると「なんで先生の話をちゃんと聞けないの!?」「ボーッとしすぎ」と説教しながら帰るのが常でした。

私の頭には「まだ小さいから」「ちょっと頑固な子だから」最近では「反抗期だから」という思いしかなかったのですが、さすがに4年生になると、ちょっとおかしいぞ!?と感じるようになりました。日々一緒に練習していて、「さっきのとこからもう1回!」と言うと「何小節目から?」と必ず聞く。少しでも間違えると、絶対に曲の頭から弾き直す。「もう少し大きく!」や「もうちょっと弓先で」などと言うと「どのくらい?」と必ず聞く。「もっと深い音で」や「カッコ良く」「軽やかに」などの言葉が伝わらない。「もうちょっと弓を増やして」に「あと何ミリ?」とかいちいち聞かれると、小学生に「何時何分何秒地球が何回回った時?」って言われたみたいにすっごくムカつきます。その度「そんなんわかるやろー!」「アンタ、話聞けない病か!」と怒鳴ってはバトルを繰り返していました。

最近のユイは異常に長く手を洗ったり、失敗すると自分の頭を強く叩くなど、心配な症状が現れてきました。朝から晩まで怒鳴りっぱなしの私も、変なできものができ、咳が止まらなくなるなど、病んできました。そんな折、発達障害に詳しい友人の話を聞く機会が何度かありました。話を聞けば聞くほどユイの行動に当てはまります。そしてインターネットでみつけたチェックシートを見ると、赤ちゃんの頃から「他の子と違う」と不思議に思ってきたユイの行動が、何個も書かれています。あー、そうだったんだと、全てのことが腑に落ちました。ユイは話を聞いてなかったのでも反抗的だったのでもなく、本当にわからなかったんだ。ユイが「発達障害」かどうかはわからないけれど、「そういう特徴を持つ子」なんだと理解しました。

その日の練習はユイが細々とどうでもいい(私にとっては)ことを言っても、ひとつひとつ具体的に答えるようにしました。もう4年生だから・時間がないからとやめていた「うまく弾けたらホワイトボードに絵を描いてあげる」も再開しました。いちいち楽譜に書き込む癖にも文句を言わず、好きなだけ書かせてみました。すると練習後「お母さん、ありがとう!いい練習ができた」と言ったのです。

TK先生の指導はとても細かく具体的で、抽象的な表現はほとんど使われません。フォルテの時も「音を大きく」ではなく、「弓の端から端まで使って」という言い方をされます。曲を「○○のイメージで」ではなく、譜面に書かれている通りに演奏するよう徹底されます。そんな指導方法がユイにはとても理解しやすく、毎回のレッスンを心から楽しみにしています。音楽・・・これほど抽象的で自由で、イメージすることが大事なものはないと、私自身は思います。これからヴァイオリンを続けていくにつれ、ユイには理解できないことがますます増えていくのかもしれません。「もうそろそろ、手が離れる頃だなぁ」と思っていましたが、まだまだユイと2人で音楽に向き合っていかねばならないようです。
by kumi-is-happy | 2016-05-12 06:44 | ヴァイオリン