まずはユイのAS状況について。4年生の2学期頃から劇的に成長し、ずいぶんと変な症状がなくなりました。換気扇の音や流水音が怖くて 1人では入れなかったトイレにも入れるようになり(今でも怖々ですが・・・)、私が付きっきりでなくても行動できるようになりました。学校では少しずつお友達と関わるようになり、2時間以上かかっていた宿題も、ささっと30分ぐらいで終わるようになりました。ユイの通う小学校(近所の公立です)は、離島で先生をされていた校長先生のもと、のんびりとした雰囲気で、ちょっと普通と違う子も大切にされています。レッスンで遅刻や早退をした時、クラスの子に「ずるい〜!」と言われるのが嫌だったユイですが、担任の先生がみんなに「ユイちゃんには学校より大事な夢があって、そのために頑張っているんだよ!」と言ってくださったことには驚きました。
音楽の先生も面白い先生で、ユイの学校の生徒はみんな音楽が大好き。合奏の曲が変わるたびに希望楽器のオーディションがあるのですが、みんなオーディションに合格したくて休み時間に練習をしています。いつも楽器が出しっぱなしで、いつでも自由に来て弾いていい音楽室!ユイは新曲で希望のコントラバスをゲットして、張り切っています。
ヴァイオリンはというと、TK先生に厳しく「親指!」「右手!」「音程!」「姿勢!」と怒鳴られ続けた1年間を経て、第2ステージに入ったような気がします。楽譜通りに弾きつつも、音楽に自分の色を付けていく。そのための「隠し味」を教わるようになりました。それはボーイングであったり、呼吸であったり、ちょっとした間であったり、左指の動かし方であったり・・・。ユイがやると、モロに音に出て「隠し味」じゃなくなってしまうのですが、「手を変え品を変え、客を魅了すること!」と言うTK先生がフォーレを弾くと、甘くせつなく多彩な音に魅了され、ヴュータンを弾くと、もの凄く緊迫感のある音にぶっ叩かれて倒れそう。絶対にTK先生のヴァイオリンから「かめはめ波」(@ドラゴンボール)出てるんですけど!!!最近はユイの音からもプチ「かめはめ波」が出始めています(>_<)
そんなTK先生を師匠と仰いで厳しいレッスンに食らいつきながら、いつも独自の視点で広い世界をみつめておられるM先生と、超一流の音楽を惜しみなく注いでくださるP先生、2人の偉大な先生にもみていただくようになったユイ。どの先生のキャラクターも音楽も心から好きで、乾いたスポンジのように先生方の教えを吸収しています。
この春、以前ご縁のあった国際コンクールに出るつもりでいました。でも、ユイの受けている指導は、どの先生の指導も一切妥協のない本場(主にフランス)のもので、本当に難しいことばかり。ユイの今までを振り返ってみると、肩当てなし→ちょっと変わった肩当てへ、3年生からチューニングはペグで(アジャスターはE線だけ)、バッハの手書き譜を読む、2年生からボーイングもフィンガリングも自分でつけている、そして先生の指導は誰もやらないような難しいボーイング・・・と、伴走する親としては頭を抱えたくなることばかり。「普通のことをやらせてくれーい!!」と叫びたくなることも多々ありましたが、当の本人が一番変わってるので、普通の先生のところにはいられなかったわけであり。そんな先生方が口を揃えて「コンクールには出なくていいよ」とおっしゃる訳が、少しわかるようになりました。
練習は、ほぼ1人でやるようになりました。私やパパが口を挟むと、狂ったように激怒!私のことは完全に見下していて、先生の言ったことしか聞かなくなりました(なので、証拠のレッスンメモや録音は必需品です)。私の役割は、音階とエチュードを「完全に仕上げてから」1度だけ聴いてチェックすることと、曲が仕上がったら聴くこと。ユイの最大の弱点は姿勢で、本当におかしな格好で弾くのでそこは厳しく直すのですが、ヴァイオリンに集中するとAS現象がひどくなり、通じない言葉が多すぎて、1時間以上言い争い→殴り合い→皿割り→母家出と発展します。なんでこんなに命がけでヴァイオリンをしないといけないのか!と、毎日毎日思ってウツになりそうですが、恐ろしいほど集中して曲を弾くユイの姿を見ていると、なるべくしてなるものになっていっている・・・その流れを私には止められない・・・と、思うばかりです。
これからどうなることやら。(ため息✕100)
ユイが5歳の時に見た映画「自尊を弦の響きにのせて〜96歳のチェリスト 青木十良〜」で初めて森先生を知り、先生が音楽監督をされている長岡京室内アンサンブルを聴き、ご著書を読み、ユイ2年生(8歳)の時に「森悠子のプロペラプロジェクト〜子ども音楽道場〜」へ参加して、初対面。それからずっと私の尊敬する音楽家・芸術家・教育者である森先生。先生の教える音楽への驚きと感動は、初めて経験した時も今も、変わることがありません。
http://katokumi.exblog.jp/17492742/
「巨匠のレッスンはどんどん受けて来い!」と言ってくださるTK先生のお達し通り、今やってるカール・フレッシュd-moll、クロイツェル9、13、23番、ヴュータン4番全楽章を必死にさらい、先生用の楽譜を製本。さすがにヴュータン全楽章ともなると、ずっしりきます(^_^;)
京都へ向かう新幹線にいる時からメールや電話で道中を心配してくださり、玄関の外で待っていてくださった森先生。壁一面の楽譜とグランドピアノ、譜面台と大きな鏡、世界じゅうから送られたポストカードや写真が貼られたレッスン室に通してくださいました。いつもたくさんのお弟子さんや子どもたちに囲まれている先生なので、一対一(ユイもいるので一対ニか)でじっくり向き合っていただくのは初めてです。「ユイちゃんはいつもニコニコしながらヴァイオリンを弾いているよね、ヴァイオリンがとっても好きなのね。」と言ってくださり、いつも自分の耳でAを取るユイに、なぜチューナー442で合わせるのかということや、海外と日本の音程の違いなどを教えてくださいました。(それ以降、いつもチューナーで合わせるユイ。今まで私が何度言っても合わせなかったのに・・・)
「じゃあ、弾いてみて」と言われてカール・フレッシュd-mollの1番(G線)を弾いたユイ。先生は「とっても上手く弾けてるね」と言いながら、「身体がねじれてる。肘が中に入りすぎ。弓を持ちすぎ。etc・・・」と、私がずーっと気になっていることを一瞬で言い当てられました。鏡の前にユイを立たせ、「片足を上げて弾いてごらん」と言われましたが、ユイ、全く足が上がらず。「自分の足がどこにあるかをわかってないのよね。」と森先生。足を上げるとヴァオリンが構えられず、ヴァイオリンを構えると足が上がらず・・・。うーん、私のほうができると思う!!
それから2時間超・・・。「身体を揺らしながら」「いろんな方向を向きながら」「丹田に力を入れて、声を出しながら」ひたすらd-moll。それがことごとくできないユイ。しまいにはパニックを起こして過呼吸に。いったん床に座りましたが、今度はあぐらをかいてまたd-moll・・・。レッスンが始まる時に「ここ、いいですか?」と椅子に座った私でしたが、ユイと一緒に動いたり、ユイの身体を支えたり、先生の身体を触らせてもらったり、座ってるヒマなんて全くありませんでした。
「頑張らない」「身体に力を入れない」「自由に動く」という森先生の指導に慣れないままに、どんどん時間が経ってしまい、d-mollの1番だけで終わってしまいそうになりましたが、「せめて1曲だけでも!!」とお願いしてクロイツェルの23番を聴いていただきました。「どうやって弾いていいか、わからない。」と言うユイに「今やったことは忘れていいよ。」とおっしゃってくださった森先生でしたが、演奏が始まるなりユイの身体を持って、どんどん揺らして動かします。小さな先生が45キロのユイを抱えられ、最後には「ユイ、飛んでる!!飛びながら弾いてる!」と私が叫んだほど。ついにユイの固まった身体と心が溶けて、「楽しい〜!!」と笑顔に。先生も「ずいぶん良くなったね。」と言ってくださいました。
「あなたはのーんびりしていたい人ね。」と、ユイの性格まで即、見抜かれた森先生。♪ペンパイナッポーアッポーペンの例を引いて「これからはバロック音楽と現代のクラシックを融合させた音楽が求められる。あなたはヨーロッパでバロックを勉強して、それを担う人になりなさい。」とおっしゃってくださいました。そしてフランスの古い本に乗っていた、暖炉の傍で片足を椅子に載せ、ゆるーく楽器を弾く人の絵をユイに見せられ、「これが理想の演奏姿」とおっしゃいました。
結局3時間近くも先生の家にお邪魔していました。TK先生をはじめ、世界中で凄い音楽家を何人も世に送り出されてきた先生なのに、真剣にユイに向き合われ、愛情を込めて教えてくださいました。翌日から2日間のプロペラプロジェクトも合わせて3日間、しっかりと偉大な音楽を学ぶぞ!と気合が入ります。
レッスン後、京都駅で。